SOUND


枯れたはずの涙は、少しでも気を緩めれば
自らの意思に反して溢れだす。
寄せては返す波のような憂鬱を
ウイスキーに溶かしてあおる日々。
あの時、私はどうするべきだったのか。
彼女の願いを叶えることが
正しかったのだろうか。
名前を呼んで唇を重ね笑いあったあの日は、
もう戻らない。
セピア色の水面に昔日の幻影を重ね、
それを壊すように飲み干す。
そしてグラスの底には疲れ切った自分の顔が、
ただ映りこんだ。
ON
OFF
