SOUND

<span class="u-font-spacing u-font-spacing--head">「</span>ただいま」<span class="u-font-spacing">は</span>、もう返ってこなかった。

僕らの世界は、白と黒の鍵盤の上にあった。

隣にいる弟の温かさと、静かに重なり合う旋律。
それさえあれば、他には何もいらなかった。

あの日、コンクールで喝采を浴びた君が、
どこかへ消えるまでは。

街の灯りが滲んでも、声を枯らして名前を
呼んでも、君のいない静寂が返ってくるだけ。

どこまで走れば、この足は君に
追いつけるのだろう。

神様、どうか。

僕の世界から、たった一つの光を奪わないで。

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