SOUND

お気に入りの服をまとう時だけ、息ができた。

鏡の前で好きな服に着替える時間は、
魔法のようだった。

でもその魔法は、
耳を塞ぎたくなるような母の悲鳴を連れてくる。

自分らしくあることが、
いつしか両親の間に深い溝を作っていく。

愛する両親を苦しめているのが
自分だと知りながら、
自分を曲げることができなかった。

『好き』を貫いた代償は、
一番大切な場所を壊すことだった。

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