SOUND

ヴァイオリンケースに鍵をかけた。

両親の優しい笑顔は、
クラシックを弾いていたから向けられたもの。

注がれていた愛情が、自分自身ではなく
『完璧な演奏者』という偶像に向けられた
ものだったと気づいてしまった。

一番わかってほしかったはずの二人に、
本当の心の音は決して届かなかった。

父がくれた譜面から、目を背けたくなる。

母が褒めてくれた指が、
あの弦に触れることを拒絶した。

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